Case Study

精密機器

株式会社島津製作所

IBM iの継続利用方針を決定工場の独自ニーズをきめ細かくサポート

PHPとPHPQUERYで開発生産性・運用性の高い統合的な環境構築を目指す

株式会社島津製作所 ロゴ

Interview

お話を伺った方

松田 学 氏

松田 学 氏

分析計測事業部 分析計測工場 工務課 副課長

山中 貴子 氏

山中 貴子 氏

分析計測事業部 分析計測工場 工務課 システムチーム 主任

高田 勝弘 氏

高田 勝弘 氏

分析計測事業部 分析計測工場 工務課 システムチーム 係長

分析計測工場の独自ニーズをIBM iで実現する

島津製作所は1875年に京都で創業して以来、卓越した科学力・技術力を核に、140年の長きにわたって事業を展開してきた。ビジネスの柱となるのは、分析・計測機器、医用機器、航空機器、産業機器の4つ。同社の製品は社会や産業、医療のさまざまな領域で広く活用されている。

2017年4月からは、新たな中期経営計画がスタートした。「世界のパートナーと社会課題の解決に取り組む企業」を目指し、ヘルスケア、インフラ、マテリアル、環境・エネルギーの4つを重点成長分野に据え、さらなる事業の拡大と企業価値の向上に挑戦する。

同社の主力生産拠点である分析計測工場は、京都市の本社敷地内にある。ここではクロマト分析や質量分析、水質測定、分光分析、表面組成分析など、多様な分析・計測機器を生産している。

同工場では、工場独自のニーズに対応するため、分散用のプラットフォームとしてPower SystemsとIBM iを導入。PHPと「PHPQUERY」(オムニサイエンス)を利用しながら、新たな開発・運用環境の構築を進めている。その経緯を詳しく紹介しよう。

IBM iでの開発凍結から一転 利用継続方針を決定

最初に、分析計測工場におけるIT化の取り組みを振り返ってみよう。(図表1)

(図表1)分析計測工場の取り組み(イメージ)

(図表1)分析計測工場の取り組み(イメージ)

同社では本社の情報システム部門が統括するメインフレーム系の基幹システムで、全社の生産管理および販売管理の各業務を支援する一方、各工場では個別のニーズに対応する分散用サーバーをそれぞれ利用してきた。

分析計測工場の場合は1985年にIBM8100を導入し、本社側の基幹システムと連携した「コンパス」と呼ばれるシステムをCOBOLで開発・運用し、生産の進捗管理など工場独自のニーズにきめ細かく対応してきた(その後、2003年にIBM iへ移行)。

しかし2006年に全社の基幹システムが再構築され、オープン系のERPソリューションである「Oracle E-Business Suite」に移行した。これに伴い、工場の分散系システムは全社システムへ統合し、将来的にはIBM iの撤去を視野に入れつつ、工場側での個別開発は凍結されることになった。

とはいえ、ERPソリューションでは各工場の独自ニーズにきめ細かく対応するのは難しく、どうしても全社基幹システムではカバーできない業務や機能が残ることになる。そこで同工場では、Windowsサーバー上でMicrosoft Accessなどを利用し、個別にプログラムを作成する動きが次第に顕著になっていったという。

しかしプログラム量が増えるにつれ、新たな問題が指摘されるようになる。

「プログラムを作成しているのは、IT担当の専任チームではなく、Accessのスキルがある各部門の業務担当者です。プログラムの増加とともにシステムは複雑化していき、全体を管理する担当者は存在せず、知識やスキルは属人化しがちです。開発者が異動・退職すると、引き継ぎや運用が困難になりました。またWindowsサーバーやOffice製品で発生するトラブルやバージョンアップへの対応など、将来的な運用性や拡張性にも疑問が投げかけられました」と語るのは、システムチームの責任者である松田学副課長(分析計測事業部 分析計測工場 工務課)である。

こうした問題の解決に向けて検討を続けた結果、同工場では2012年12月、IBM iを継続利用するという方針を決定し、新しいPower Systemsを導入した。さらに「IBM i上でもう一度、工場のニーズに即したシステムをきちんと作る」という目標のもと、2010年にいったんは解散していたIT担当のシステムチームを2014年10月、製造推進課に発足させた(その後、2015年10月に現在の工務課に異動)。

IBM iの継続利用とさらなる活用に向けて、同工場は本格的に動き出したのである。

PHPとPHPQUERYでIBM iの開発・運用環境を見直す

システムチームは発足したものの、個別開発が進んでいたIT環境は大幅な見直しを必要としていた。

前述したようにシステムは複雑化し、プログラムの構造や仕様は統一されておらず、開発や運用管理も一元化されていない。バージョンアップに伴う移行テスト作業の負荷は大きく、トラブル発生時の問題の切り分けも困難を極めた。プログラムの数だけシステムチームの作業負荷は増大し、新しい開発に着手する余裕は失われていた。

こうした問題を解決するために、システムチームが目指したのは、標準化された手法と共通のツールによるIBM iの新しい開発・運用環境である。

IBM i上のコンパスは従来の5250画面で操作されていたが、その一方、Windows上で開発されてきたプログラム群はWeb画面で利用していた。そこでIBM iの堅牢性と運用管理性を備えたコンパスと、ここ10年ほどで急速に開発が進んだWindowsサーバー上のWebアプリケーション双方のよさを備えた新システムとして、「iCOMPASS」が2016年に誕生した。

iCOMPASSでは、「Zend Server」によるPHPと、データ抽出・連携などのクエリー機能を提供する「PHPQUERY」(オムニサイエンス)を採用している。(図表2)

(図表2)iCOMPASS と PHPQUERY の開発・運用環境(イメージ)

(図表2)iCOMPASS と PHPQUERY の開発・運用環境(イメージ)

PHPQUERYを採用した理由として、山中貴子主任(分析計測事業部 分析計測工場 工務課 システムチーム)は以下のように指摘する。

「データ抽出・連携が可能なツールをいくつか検討しましたが、無駄に高機能で高額な製品は避けたいと考えていました。PHPQUERYの場合は、当社が求めているレベルに製品の機能がマッチしていること、PHPのスキルをもたないシステムチームの担当者でも容易に開発できること、画面表示の設定を自由にカスタマイズできるなどエンドユーザーにとっても使いやすいこと、ユーザー数無制限で低価格であること、そしてCSVファイルのエクスポートやWeb画面からのリンクが可能であることなど、総合的に評価して導入を決定しました」

iCOMPASS誕生 最初の開発は手配進捗管理ツール

PHPQUERYの導入決定は、2015年12月である(導入は2016年1月から)。

最初に取り組んだのは、それまでAccessで作成されていた生産の手配進捗管理ツールの再構築であった。組み立て時の部品手配や不適合を管理する、同工場内で最も利用ユーザーの多いツールの1つだ。

PHPでWeb画面を作成し、全社基幹システムとのデータ抽出やDb2 for iへの連携などをPHPQUERYが実行する。

Accessで開発されていた既存ツールの仕様をシステムチームで見直し、要件が確定した機能から、PHPQUERYの開発・販売元であるオムニサイエンスに開発を依頼した。新しい手配進捗管理ツールが本稼働したのは、2016年10月のことである。

「単純な照会画面であれば、PHPQUERYでは従来に比べて、90%程度の開発工数削減が可能であると確認しています。シンプルであればあるほど、PHPQUERYのよさが活かせる印象です。スケジュール設定によるメール配信やCSVファイルの作成、バッチ処理のキックなど画面以外の機能も充実しているので、Outlookでの配信やAccessによるCSVファイルの作成といった従来の方法に比べると、開発工数の削減だけでなく、安定稼働によるトラブルの解消という効果も生まれています」と、その導入効果を語るのは、高田勝弘係長(分析計測事業部 分析計測工場 工務課 システムチーム)である。

現在、同工場では全社基幹システムとは別に、3系統のシステムが稼働している。1つ目は、コンパスを利用するための5250画面。2つ目は、PHPとPHPQUERYで実現したiCOMPASSのWeb画面。そして3つ目は、Accessで開発されてきたWeb画面である。これらは全社基幹システムのデータと連携する場合もあれば、工場側のみのDBで運用されている場合もある。

システムチームでは今後、改善要望の高い機能から順番に、業務改善を加えながらiCOMPASSで開発していく方針である。

5250で運用されている画面のWeb化、Accessで作成されているプログラムの再開発、あるいはまだIT化が未着手の業務に対しても、優先順位と重要度を考慮しながら対応していく。さらに、グラフ作成などPHPQUERYが備える新しい機能を活かした設計、プログラム作りにも注力していくとのことである。

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島津製作所は1875年に京都で創業して以来、卓越した科学力・技術力を核に、140年の長きにわたって事業を展開してきた。ビジネスの柱となるのは、分析・計測機器、医用機器、航空機器、産業機器の4つ。同社の製品は社会や産業、医療のさまざまな領域で広く活用されている。2017年4月からは、新たな中期経営計画がスタートした。「世界のパートナーと社会課題の解決に取り組む企業」を目指し、ヘルスケア、インフラ、マテリアル、環境・エネルギーの4つを重点成長分野に据え、さらなる事業の拡大と企業価値の向上に挑戦する。