Case Study

文具製造

株式会社パイロットコーポレーション

PHPQUERYへの切り替え後、全社でデータ活用が拡大

汎用性をもたせたクエリー定義など、利用拡大に創意工夫

お話を伺った方

梶 邦夫 氏

梶 邦夫 氏

情報システム室 室長

大谷 耕司 氏

大谷 耕司 氏

情報システム室 システム第一課 課長

間中 伸一 氏

間中 伸一 氏

情報システム室 システム第一課

柴崎 わかな 氏

柴崎 わかな 氏

情報システム室 システム第一課

南口 智之 氏

南口 智之 氏

情報システム室 システム第二課

独創的なアイデアと技術力で ヒット商品を生み出す

「フリクション」という名前のボールペンをご存じだろうか。パイロットコーポレーション(以下、パイロット)が2006年に発売した製品で、書いた文字をペン後部のラバーでこするときれいに消せ、何度でも書き直せるという魔法のようなボールペンである。日本よりも先にフランスで発売するとたちまち爆発的なヒットとなり、フランスから欧米へ、そして日本でも火がついて、全世界で30億本以上を販売する大ベストセラー商品となった(左上写真)。現在でも常時、売れ筋上位にランクされる定番商品だ。

このフリクションのメカニズムは、熱(摩擦熱)を加えると透明になるという特殊なインク(独自開発のフリクションインク)を利用したものだが、筆記具市場はこのように、アイデアと技術力がものを言う世界なのである。そしてパイロットでは古くから、独創的なアイデアと技術を形にした数々のヒット製品を市場に送り出してきた。

図表1:大型高級万年筆「カスタム URUSHI(漆)」の製品イメージ

図表1:伝統の書き味を現代によみがえらせた大型高級万年筆「カスタム URUSHI(漆)」

最近のヒット商品の一部を挙げると、なめらかに書ける油性ボールペン「アクロボール」(2008年)、伝統の書き味を現代によみがえらせた大型高級万年筆「カスタム URUSHI(漆)」(2016年、図表1)、ペン先が乾かない油性マーカー「パーマネントマーカー」(2017年)、折れないシャープペンシル「モーグルエアー」(2017年)などがある。これらの製品をお使いの読者も少なくないだろう。

情報システム室室長の梶邦夫氏は、「当社の製品イノベーションは、顧客満足度の向上を目指すなかから生まれています」と、次のように話す。

「当社では、顧客満足度の向上はお客様に満足していただける製品のご提供にこそあると考えています。お客様のニーズは世界の地域ごとに異なることもありますが、共通するのは高品質で高機能、高付加価値であることです。当社はこれらを追求し続けてさまざまな製品を開発し、事業を拡大させてきました」。

iPad導入を機にQuery/400から WebQueryへ移行

顧客ニーズを探る日常的な活動の1つは、売上・販売・在庫などのデータを正確に把握し、そこから消費者の変化や市場の新しい動きを読み取ることである。

同社では、1961年にIBMの電子計算機(パンチカードシステム)を導入し1989年にIBM i(当時、AS/400)へ切り替えた当初から、Query/400を利用して基幹システム上の各種データを利用してきた。Query/400は情報システム室が使用するツールとし、ユーザーからデータの依頼があるとシステム担当者がデータを抽出・整理し、プリントや帳票の形で提供する運用を行ってきた。データを利用するのは、販売・経理・営業企画などの部門である。

そして、そうした運用が2012年まで約20年続いたあとに、大きな転機が訪れた。iPadの全社導入に伴い、「Webブラウザに対応可能な、GUI機能をもつデータ検索・分析ツールが必要になった」(大谷耕司氏、情報システム室システム第一課 課長)からである。

新たに採用したのはWebQueryである(図表2)。IBMによってQuery/400の後継として位置づけられていたツールで、導入後は、抽出したデータを紙やExcelだけでなく、画面でも提供することにした。「20年に及ぶデータ活用の経験のなかでユーザーのITリテラシーが大きく向上したので、利便性とスピードを考えて画面でも提供することにしました」と、大谷氏はその理由を述べる。

図表2:Query/400 から WebQuery、そして PHPQUERY への移行イメージ

図表2:Query/400、WebQuery から PHPQUERY への移行イメージ

WebQueryの導入後、ユーザーのデータ活用は順調に進んだ。導入から3年間に情報システム室がユーザーの依頼を受けて開発したクエリープログラムは220本。それらのプログラムは、イントラネットのポータルサイト上に掲示し、アクセス権限に基づいて自由に利用できるようにした。慣れたユーザーなら、プログラムを検索し、求めるデータをスピーディに取得できるようになった。

ただし、その反対に、プログラムの本数が多すぎてユーザーが混乱するという事態も起き始めていた。情報システム室の柴崎わかな氏(システム第一課)は、「データの依頼は毎月数十件ありましたが、対象とする期間や店舗が異なるだけといった似たような依頼が増え、その非効率の解決が課題になっていました」と話す。

またその一方、情報システム室では、「WebQueryの豊富な機能を使いこなせていないのではないか」という懸念の声や、「WebQueryは当社にとって不必要な機能が多い。使いやすいツールに替えて、生産性を上げるべきではないか」との声も上がっていた。

機能・価格・ベンダーの対応を 評価し、PHPQUERYを選択

そうした折、日本IBMからWebQueryの保守料金改訂のアナウンスがあった。同社では2018年にIBM iのリプレースを予定していたので、「より使い勝手のよい、コストパフォーマンスに優れるツールを探す格好のタイミングと考え、調査・検討作業をスタートさせました。OS(IBM i)のバージョンアップに伴うWebQueryの対応作業も懸念材料の1つでした」と、大谷氏は振り返る。2015年後半のことである。

候補となる製品がいくつか挙げられたなか最後まで残ったのは、オムニサイエンスの「PHPQUERY」である。情報システム室の間中伸一氏(システム第一課)は、「PHPQUERYは直観的な操作が可能で、かつ低価格である点に好感をもちました。WebQueryは、利用の間隔を空けると操作がわからなくなるのが難点でした」と言い、南口智之氏(情報システム室システム第二課)は、「WebQueryではクエリーを定義・作成するまでのハードルが高かったのに対して、PHPQUERYはユーザーインターフェースがよく、スムーズな操作が可能でした」と、それぞれ評価の理由を語る。

ただし、クエリー定義を行う際のライブラリの指定やファイル選択などの操作手順が、使い慣れているQuery/400やWebQueryと異なっている点が懸念事項として挙げられた。「その点をオムニサイエンスにぶつけたところ、次期バージョンで改善するとの回答があり、ほどなく対応してもらえました。製品の機能・価格のよさもさることながら、質問や問い合わせへの迅速なレスポンスも当社の意向に合っていたので、採用を決めました」と、梶氏は話す。

220本のクエリー定義を整理・統合し 110本のPHPQUERYプログラムに集約

2016年6月に導入準備をスタート。約4カ月をかけて、WebQueryで作成した220本のプログラムを整理・統合し、110本のPHPQUERYプログラムに作り直した。この作り替えでは、「対象とする期間や店舗などを、ユーザーが選択してデータを取得できるよう、ある程度、汎用的な形にしました」と、間中氏。10月に、まず1部門(お客様相談室)へ導入し、ユーザーから上々の評価を受けて、2017年3月から全社展開を開始した(図表4、図表5)。

図表3・4:iPad ホーム画面と PHPQUERY クエリーメニュー画面

図表3・図表4:iPad ホーム画面/PHPQUERY クエリーメニュー画面

導入から約1年を経過した2017年秋の利用状況は、クエリー定義の実行が月2000回(1日平均100回)、抽出データのExcel化は月1400回だった。大谷氏は、「ユーザーのアクセス数は着実に増加しています。しかしそれにもかかわらず、新規のクエリー開発は25本で済んでいます」と説明する。

今後の課題として、南口氏は「利用状況の分析から、ユーザーの利便性をさらに高める、新しい使い方を提案していくこと」と言い、柴崎氏は「PHPQUERYのCL連携機能を使えば、データ抽出の自動化など、さらに便利な使い方ができそうです」と抱負を語る。

顧客ニーズを探るためのパイロットの挑戦は、まだ続いている。

Company Profile

株式会社パイロットコーポレーション

文具製造

株式会社パイロットコーポレーション ロゴ

1918(大正7)年創業のパイロットコーポレーションは、今年創立100周年を迎える総合筆記具メーカーである。創立当初から独創的な発想と技術力、製品開発力で知られ、これまでに「キャップレス万年筆」「ドクターグリップ」「ハイテック-C」など数々のヒット商品を生み出してきた。近年は、消せるインクを用いた「フリクションシリーズ」が全世界で30億本以上を売り上げる大ヒット商品となった。海外展開もいち早く進め、売上比率では海外が国内を上回る。中期経営計画の方針として「顧客満足度世界一の筆記具メーカー」を掲げている。